(笠貫, 他 2011) 自閉症と異食行為

自閉症患者には、比較的異食行為が多い。異食行為と一口に言っても、その内容としては食物以外のものを食べる場合から、特定の食品・飲料を異常な量摂取する場合など、様々である。異食行為に対する治療法は確立されていないが、この症例報告ではFLVX(デプ…

(Dionne & Martini 2011), (Wieder & Greenspan 2003) 自閉症とFTP

FTP(フロアタイムプレイ、フロアタイム)は、自閉症児と行動をともにすることにより、コミュニケーションスキルを向上させようとする方法である。行動の主体はあくまで児童側にあり、その意味では行動療法と正反対のアプローチと言ってもいいかもしれない。…

(横山, 他 2009) 自閉症と「指示待ち」

自閉症児は、さまざまなストレス等により気分障害を合併すると、時に自発性が極端に低下してしまう。このような場合、通常は日常的に行える行動が、他人に指示されるまで行えないことがある。この状態を、「指示待ち」と呼ぶようだ。このような症状が疑われ…

(Holtmann, et al. 2011) 自閉症とニューロフィードバック

ニューロフィードバックを簡単に説明すると、脳波の状態によってビデオやゲームが中断するような装置を使って、被験者の脳波が一定の条件をみたし続けるよう訓練する方法。歴史的には1970年代からおこなわれており、いわゆる代替医療の一つとして欧米ではそ…

(松崎 2010) 自閉症の病態

自閉症の発症要因に関しては、星の数ほどの研究が行われているにもかかわらず、未だにはっきりとしたことはわかっていない。遺伝要因と環境要因のどちらが発症に寄与しているのかさえも、定説がない状態である。個人的には自閉症は症候群であり、単一の病態…

(中村 2010) 自閉症と神経イメージング

神経イメージングとは、何らかの方法により特に中枢神経の活動性を画像化し診断に利用しようとするもの。現状ではPETやfMRIなどが主な方法である。神経イメージング上、自閉症の脳には通常とは異なる特徴があり、最近ではそれらの所見とミラーニューロンシス…

(Rossignol 2009) 自閉症と新規治療法

2009年のレビューなので「新規」と言うには若干古いものも含まれているかもしれないが、現在も通用する内容だと思う。音楽療法がグレードAというのは、ちょっと驚き。 Ann Clin Psychiatry. 2009 Oct-Dec;21(4):213-36. Novel and emerging treatments for a…

(Bent, et al. 2011), (Cysneiros, et al. 2009), (Meiri, Bichovsky & Belmaker 2009), (Politi, et al. 2008), (Amminger, et al. 2007) 自閉症とω-3脂肪酸

日本ではあまりおこなわれていないようだが、海外では自閉症に対してのω-3脂肪酸による治療の研究がしばしば行われている。日本であまり行われていないのは、ω-3脂肪酸がサバ、マグロ、イワシ、サンマ、ブリ、サケ、ニシンなどに豊富に含まれているため、通…

(村上 2010) 自閉症の潜在的コミュニケーション能力

低機能自閉症であっても、コミュニケーション能力発達の潜在的能力を持っている場合が多い。また、常同行動などの特異的な症状も、低レベルのコミュニケーション能力の表れとして解釈可能である。自閉症の能力の発達は、通常の発達とは異なり、かなり年長の…

第二言語学習に適した時期

日本人がバイリンガルを目指す場合、第二言語の学習をいつ始めるのが良いのかは良くわかっていないが、いつ始めるのが良くないかに関しては、ほぼ意見が一致している。言語学を専門とするトロント大学名誉教授の中島和子氏は、9〜13歳は母語の固定を再優先す…

(門眞 2010) 自閉症と視覚優位

自閉症者とコミュニケーションを取る場合、音声による言語だけよりも、視覚情報を利用した方法が有効である場合が多い。PECSに関しては (Ganz, et al. 2011) 自閉症にPECSと音声発生装置が有用 - Record of Self-Development でも少し記載したが、積極的に活…

(O'Hearn, et al. 2011) 自閉症と視覚情報処理

自閉症患者の視覚情報の処理の方法は、一般の人とはかなり異なっている。一般の人はまず全体像からどの部分にプライオリティを置くべきか確認し、登場人物などがいればその状況を重点的に把握しようとする。一方で自閉症患者はそのようなプライオリティを十…

(高橋 2010) 自閉症の診断

自閉症は年齢により症状の出現が変化する。2~3歳程度であれば、診断は比較的難しくない。青年期であっても、積極型と孤立型では診断は容易であるが、受動型では特徴的な所見が余り無いため、診断が困難である。このような場合には、過去の症状を診断の参考と…

(吉岡, 関野 2010) 自閉症とSRP

自閉症スペクトラム障害にとって、歯周病や歯槽膿漏は非常に厄介な問題である。通常の方法では対応できず、診療困難な場合も多いと考えられる。 スケーリング・ルートプレーニングとは、歯石やプラークを除去する方法の一つ。スケーラーと呼ばれる器具を使っ…

(黒川 2010) 自閉症と演劇療法

自閉症の演劇療法に関する研究は海外ではそれほど珍しくないが、日本ではあまりおこなわれていないようだ。この研究は5〜6歳時の軽度発達障害児へ8ヶ月間心理劇を行ったという研究。評価方法や研究デザインなどに問題があるものの、一定の効果は確認できたと…

(Vasilyeva, et al 2010) バイリンガルの言語間の非対称性

ヒトは、何かを考えるときに言語を使う。一般の日本人であれば、日本語を使って考えているはずだ。バイリンガルの場合も、思考は第一言語でおこなっていることが多いだろう。つまり一般的には、第一言語と第二言語との関係は対等でないと考えるのが妥当だ。…

(Dodig-Curković, et al. 2011) 自閉症とリスペリドン

リスペリドンは日本では統合失調症の保険適用しか認可されていないが、自閉症に対しても認可している国も多い。自閉症のさまざまな症状に対しても有効性は十分確立されているので、日本でも自閉症に対しての適応拡大が望まれている。クロアチアでは、15歳以…

(Ganz, et al. 2011) 自閉症にPECSと音声発生装置が有用

PECSとは、自閉症患者とのコミュニケーションに、このような絵の書かれたボードを使う手段。比較的一般的に使われている方法である。それに比べると、音声発生装置が有用という報告は珍しいかもしれない。今度、息子で試してみよう。 J Autism Dev Disord. 2…

(Petersen 2010) バイリンガル自閉症

バイリンガルの自閉症に関する研究は限られており、一定の見解は得られていないようだ。この研究では全般的にバイリンガル自閉症の言語スキルの高さが主張されているが、そもそも自閉症スペクトラムには様々な言語・知的レベルの症例が含まれており、個人的…

(Pham, Kohnert & Mann 2011) モノリンガル臨床医とバイリンガル患者

バイリンガルの言語障害に対する医療には、他の疾患にはない様々なハードルがある。特に両言語に対して治療を行うためには、通常は治療者自身がその二言語を自由に扱える必要があるが、誰もがそんな主治医を持てるわけではない。この研究ではコンピューター…

(Sansa, et al 2011) 自閉症と難治性てんかん

詳しいメカニズムは不詳だが、自閉症とてんかんとは合併頻度が高い。しかもこのレビューによれば、一般集団よりも難治性のてんかんが多く、さらに一般の難治性てんかんよりもさらに難治性だという。症例数があまり多くないので、この結果をそのままうのみに…

(Marcus, et al. 2011) 自閉症とアリピプラゾール

アリピプラゾール(エビリファイ)はドパミン受容体やセロトニン受容体に作用する薬剤であり、感情表出能力、無為・自閉、幻覚、妄想などの症状の改善が期待できる。日本での適応症は統合失調症のみであるが、米国では自閉症児の癇癪に対しても適応症として…

(Paradis 2011) バイリンガル失語試験

バイリンガル失語は非常にバリエーションの多い、評価困難な疾患である。そもそも元となるバイリンガル自体が、第一言語・第二言語の組み合わせ、各言語の習得年齢や環境、各言語の習得度といった多数のパラメータの影響をうけるため、多彩な状態をとりうる…

(von Hapsburg & Peña 2002) バイリンガルと聴力検査

モノリンガルと比較するとバイリンガルには多数の問題点があるが、聴力検査、特に言葉の聞き取り具合を調べる語音聴力検査も難しいものとなっている。単に第一言語、第二言語が何語なのかというだけでなく、それぞれの言語の熟達度がどうだったのかがわから…

(Silva, Schalock & Ayres 2011) 自閉症と漢方治療

漢方といっても、いわゆる漢方薬ではない。推拿(すいな)療法という、中国式の整体療法が自閉症の改善に有効だったという研究。「知覚」や「自己制御」を改善すると言うが、評価方法も主観的であり、エビデンスレベルとしてはあまり評価できない。それにして…

(Bastiaansen, et al. 2011) 自閉症とミラーニューロンシステム

自閉症におけるミラーニューロンシステムの障害は、以前より指摘されてきた。この論文では、加齢にともなってその機能が改善することが示された。何歳程度まで改善が続くのかはわからないが、小児期のうちにあきらめてしまうことなく、症状改善へ向けての努…

(Hoff, et al. 2011) 早期バイリンガル発達

バイリンガルの言語発達は、各言語の「インプット」により、ある程度規定されてしまう。言語の学習環境が、バランスバイリンガルを目指すためには非常に重要なポイントとなるのだ。 つまり、カナダのエマルジョン方式のように、各言語のインプットを最適化す…

(Ross et al. 2011) 自閉症の言語発達

自閉症の言語発達は、正常発達時に比べると遅い。始まりが遅いだけでなく、かなり遅い時期まで発達を続ける。従って自閉症の言語教育は、例え良い結果が認められなくても、根気づよく長期間にわたって続けることが重要である。 Eur J Neurosci. 2011 May 25.…

(Kambanaros & Grohmann 2011) バイリンガル失語症テストと方言

バイリンガル失語症の評価の問題には、症例ごとの様々な背景因子の違いももちろんあるが、「方言」という問題もある。この研究では「キプロス方言」に対して「ギリシャ語バージョン」がうまく機能したということであるが、方言と標準語の「距離」は様々であ…

(Lerner, Mikami & Levine 2011) 自閉症と演劇療法

自閉症に対する演劇療法に関しては、有効性を主張する研究がいくつか存在する。しかし研究デザインが不十分なものも多く、この研究も例数や効果の評価法の点で満足すべきものとはいえない。もっとも「パイロットスタディ」という位置づけなので、ぜひ今後の…