(白井 2008) 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か 第2章

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

第2章 なぜ子どもはことばが習得できるのか 「臨界期仮説」を考える

第2言語習得に成功するのはどんな学習者か

様々な要因に関して、外国語学習の成否にどのような影響をあたえるかが研究されてきましたが、これまでの研究から、どういう学習者が外国語学習に成功するかを予測するもっとも重要な要因は、三つあると言われています。

  1. 学習開始年齢
  2. 国語学習適性
  3. 動機づけ

めぐちゃんの場合、おそらく2と3は問題ないだろう。では1に関してはどうなのだろうか?

臨界期仮説 思春期を過ぎたらだめ?

年齢が習得の成否に非常に大きな影響を与える、という事実は、第2言語習得研究で定説になっています。つまり学習を始める年令によって、学習が成功する確率がおおきく変わってくるということです。

参考文献としては、以下のものを挙げている。

人種の影響と臨界期仮説

さらに、ジアらの2002年の別の論文では、人種によって、臨界期の表れ方が異なる、というデータを提示しているので、この点にも触れておきましょう。
(中略)
アメリカへ移住した人のアメリカ到着時の年齢と英語能力の関係を調べ、それをヨーロッパ系グループ(主にロシア語を母語とする学習者)とアジア系グループ(北京語、広東語、韓国語を母語とする学習者)に分けて比較したのです。すると、ヨーロッパ系学習者には統計的に有意な年齢の影響がなく、アジア系学習者にだけ有意な年齢の影響があったのです。

人種の影響というよりは、言語間の距離が影響しているのではないだろうか? 言語間の距離が近いほど年齢にかかわらず英語の獲得がうまくいき、距離が遠いほど適切な年齢が必要になってくると私は考える。
実際に元論文の抄録に当たってみたが、「人種」という切り口での記載は一切ない事を確認した。

母語を二つ同時に習得 バイリンガルへの道

しかし、小さいうちに外国へ行けば、すべての子どもがいわゆるバイリンガルになれるわけではありません。まず、その外国語を十分に使う環境にいることが前提条件です。例えば、若いうちに米国に渡っても、同じ国から来た友だちと一緒にいてその言語だけ使っていたら、当然ながら外国語習得はできないし、そのような移民も実際にたくさんいます。また、その逆に、母語を保持することもそう簡単ではなく、母語で読み書きができなかったり、また話せなくなって聞いて分かるだけの「受容バイリンガル」になってしまうケースもずいぶん有ります。

結局、バイリンガルの成否というものは簡単には決まらない。年齢・言語間距離・学習方法、すべての条件が整ったとしても、100%バランス・バイリンガルになれるというものではないのだろう。

まとめ
  • 第2言語学習に適した年齢が存在する
  • 母語がどの言語かによって、第2言語学習の難易度が変わる