(門眞 2010) 自閉症と視覚優位

自閉症者とコミュニケーションを取る場合、音声による言語だけよりも、視覚情報を利用した方法が有効である場合が多い。PECSに関しては (Ganz, et al. 2011) 自閉症にPECSと音声発生装置が有用 - Record of Self-Development でも少し記載したが、積極的に活用すべきであろう。最近iPadをはじめとするタブレットタイプの機器やスマートフォンが普及しているので、それらの機器を利用すれば、単純なPECSよりも効果的なソリューションが比較的簡単に実現できる可能性がある。

【症候からみる自閉症スペクトラム自閉症スペクトラムにみられる「視覚優位」(解説/特集)

http://xc524.eccart.jp/y922/images/147_l.jpgAuthor:門眞一郎(京都市児童福祉センター)
Source:精神科治療学(0912-1862)25巻12号 Page1619-1626(2010.12)

Abstract:自閉症スペクトラムについてよく言われる「視覚優位」は、視覚情報処理が対照群と比較して優れているという意味と、個体内での情報処理に関して、聴覚的な処理に比べて視覚的な処理が優れているという意味とが考えられる。普段「視覚優位」と呼ばれるときは、個体内での視覚情報処理の聴覚情報処理に対する優位性をさすようである。しかし、それは厳密な実験手続によって確認されているわけではなく、視覚的支援があるとコミュニケーションが成立しやすくなるという日常的な手ごたえが、「視覚優位」という表現を引き寄せていると思われる。手ごたえを感じさせるコミュニケーションの双方向的な視覚的支援として、視覚的構造化と代替拡大コミュニケーションが重要である。後者に関しては、今後特に自発性を重んじる絵カード交換式コミュニケーション・システム(PECS)の普及が望まれる。