(村上 2010) 自閉症の潜在的コミュニケーション能力

低機能自閉症であっても、コミュニケーション能力発達の潜在的能力を持っている場合が多い。また、常同行動などの特異的な症状も、低レベルのコミュニケーション能力の表れとして解釈可能である。自閉症の能力の発達は、通常の発達とは異なり、かなり年長の時点で認められることも多い。潜在的なコミュニケーション能力の発現に有効な介入方法の開発が期待される。

【症候からみる自閉症スペクトラム潜在的視線触発 自閉症の基本構造についての現象学的仮説(解説/特集)

http://xc524.eccart.jp/y922/images/147_l.jpgAuthor:村上靖彦(大阪大学 大学院人間科学研究科)
Source:精神科治療学(0912-1862)25巻12号 Page1627-1632(2010.12)
Abstract:言語を使用せず、アイコンタクトや呼びかけへの気づきのない低機能の自閉症児であっても、他の人の指示に従ったり、シンクロする行為を行う。あるいはコミュニケーションの能力が非常に限られていても、後になってアイコンタクトを発見する事例もある。これらの現象は、機能の低い自閉症児であっても、潜在的には対人関係を発現する可能性をもっていることを暗示しているであろう。アイコンタクト以前、かつ(ミラー・ニューロン系に関わる)共感の作動以前の潜在的な対人関係の可能性を「潜在的な視線触発」と呼び、自閉症と定型発達が共有する対人関係の基盤として仮定してみる。この現象はリズムへの感受性と関係があると類推できる。そこから、常同行動などいくつかの自閉症児に特徴的な現象を、整合的に説明することができる。潜在性から具体的な視線触発が発現するプロセスの遅れは、対人関係の構造の違いをもたらすことになる。