自閉症と水銀中毒、キレート療法

多くの医療施設で、自閉症の治療という名目でキレート療法が行われています。また、自閉症のリスクが高まることを恐れて、子供へのワクチン接種を拒否するケースもあると言われています。

事の発端は、1998年にWakefieldらが発表した論文でした*1。このMMRワクチンと自閉症発症を関連付けたわずか12人の小児の事例報告により、英国ではMMRワクチンの接種率は低下し、麻疹が再流行するようになりました。さらに、科学的根拠がないにもかかわらず、米国では2001年からワクチンへのチメロサール使用を中止しました。この後に自閉症の発症率はむしろ高くなっていることからも明らかなように、水銀中毒と自閉症発症とには何の関係もありません。

また2008年にHornigらはWakefieldらの研究を追試していますが、そこでもワクチンと自閉症との関連性は認められませんでした*2。そして2010年2月に、LancetはWakefieldらの論文を撤回しました*3。医学的には、Wakefieldの説は完全に否定されたということです。このような状況にありながら、いまだに自閉症とワクチンや水銀との関係を主張し、キレート療法などを行い続けているとんでもない医者がいることは、とても嘆かわしいことです。

なお日本小児科学会では、2006年の段階ですでに自閉症に対するキレート療法を支持しないという立場を明らかにしています*4

結論
  • MMRワクチン投与や水銀摂取と自閉症発症を関連付ける証拠は何も無い。
  • 水銀除去目的のキレート療法の自閉症治療への有効性を示す証拠は何も無い。
  • いまだにキレート療法を行い続ける「トンデモ医師」がいることは、とても嘆かわしい。