2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

(高橋 2010) 自閉症の診断

自閉症は年齢により症状の出現が変化する。2~3歳程度であれば、診断は比較的難しくない。青年期であっても、積極型と孤立型では診断は容易であるが、受動型では特徴的な所見が余り無いため、診断が困難である。このような場合には、過去の症状を診断の参考と…

(吉岡, 関野 2010) 自閉症とSRP

自閉症スペクトラム障害にとって、歯周病や歯槽膿漏は非常に厄介な問題である。通常の方法では対応できず、診療困難な場合も多いと考えられる。 スケーリング・ルートプレーニングとは、歯石やプラークを除去する方法の一つ。スケーラーと呼ばれる器具を使っ…

(黒川 2010) 自閉症と演劇療法

自閉症の演劇療法に関する研究は海外ではそれほど珍しくないが、日本ではあまりおこなわれていないようだ。この研究は5〜6歳時の軽度発達障害児へ8ヶ月間心理劇を行ったという研究。評価方法や研究デザインなどに問題があるものの、一定の効果は確認できたと…

(Vasilyeva, et al 2010) バイリンガルの言語間の非対称性

ヒトは、何かを考えるときに言語を使う。一般の日本人であれば、日本語を使って考えているはずだ。バイリンガルの場合も、思考は第一言語でおこなっていることが多いだろう。つまり一般的には、第一言語と第二言語との関係は対等でないと考えるのが妥当だ。…

(Dodig-Curković, et al. 2011) 自閉症とリスペリドン

リスペリドンは日本では統合失調症の保険適用しか認可されていないが、自閉症に対しても認可している国も多い。自閉症のさまざまな症状に対しても有効性は十分確立されているので、日本でも自閉症に対しての適応拡大が望まれている。クロアチアでは、15歳以…

(Ganz, et al. 2011) 自閉症にPECSと音声発生装置が有用

PECSとは、自閉症患者とのコミュニケーションに、このような絵の書かれたボードを使う手段。比較的一般的に使われている方法である。それに比べると、音声発生装置が有用という報告は珍しいかもしれない。今度、息子で試してみよう。 J Autism Dev Disord. 2…

(Petersen 2010) バイリンガル自閉症

バイリンガルの自閉症に関する研究は限られており、一定の見解は得られていないようだ。この研究では全般的にバイリンガル自閉症の言語スキルの高さが主張されているが、そもそも自閉症スペクトラムには様々な言語・知的レベルの症例が含まれており、個人的…

(Pham, Kohnert & Mann 2011) モノリンガル臨床医とバイリンガル患者

バイリンガルの言語障害に対する医療には、他の疾患にはない様々なハードルがある。特に両言語に対して治療を行うためには、通常は治療者自身がその二言語を自由に扱える必要があるが、誰もがそんな主治医を持てるわけではない。この研究ではコンピューター…

(Sansa, et al 2011) 自閉症と難治性てんかん

詳しいメカニズムは不詳だが、自閉症とてんかんとは合併頻度が高い。しかもこのレビューによれば、一般集団よりも難治性のてんかんが多く、さらに一般の難治性てんかんよりもさらに難治性だという。症例数があまり多くないので、この結果をそのままうのみに…

(Marcus, et al. 2011) 自閉症とアリピプラゾール

アリピプラゾール(エビリファイ)はドパミン受容体やセロトニン受容体に作用する薬剤であり、感情表出能力、無為・自閉、幻覚、妄想などの症状の改善が期待できる。日本での適応症は統合失調症のみであるが、米国では自閉症児の癇癪に対しても適応症として…

(Paradis 2011) バイリンガル失語試験

バイリンガル失語は非常にバリエーションの多い、評価困難な疾患である。そもそも元となるバイリンガル自体が、第一言語・第二言語の組み合わせ、各言語の習得年齢や環境、各言語の習得度といった多数のパラメータの影響をうけるため、多彩な状態をとりうる…

(von Hapsburg & Peña 2002) バイリンガルと聴力検査

モノリンガルと比較するとバイリンガルには多数の問題点があるが、聴力検査、特に言葉の聞き取り具合を調べる語音聴力検査も難しいものとなっている。単に第一言語、第二言語が何語なのかというだけでなく、それぞれの言語の熟達度がどうだったのかがわから…

(Silva, Schalock & Ayres 2011) 自閉症と漢方治療

漢方といっても、いわゆる漢方薬ではない。推拿(すいな)療法という、中国式の整体療法が自閉症の改善に有効だったという研究。「知覚」や「自己制御」を改善すると言うが、評価方法も主観的であり、エビデンスレベルとしてはあまり評価できない。それにして…

(Bastiaansen, et al. 2011) 自閉症とミラーニューロンシステム

自閉症におけるミラーニューロンシステムの障害は、以前より指摘されてきた。この論文では、加齢にともなってその機能が改善することが示された。何歳程度まで改善が続くのかはわからないが、小児期のうちにあきらめてしまうことなく、症状改善へ向けての努…

(Hoff, et al. 2011) 早期バイリンガル発達

バイリンガルの言語発達は、各言語の「インプット」により、ある程度規定されてしまう。言語の学習環境が、バランスバイリンガルを目指すためには非常に重要なポイントとなるのだ。 つまり、カナダのエマルジョン方式のように、各言語のインプットを最適化す…

(Ross et al. 2011) 自閉症の言語発達

自閉症の言語発達は、正常発達時に比べると遅い。始まりが遅いだけでなく、かなり遅い時期まで発達を続ける。従って自閉症の言語教育は、例え良い結果が認められなくても、根気づよく長期間にわたって続けることが重要である。 Eur J Neurosci. 2011 May 25.…

(Kambanaros & Grohmann 2011) バイリンガル失語症テストと方言

バイリンガル失語症の評価の問題には、症例ごとの様々な背景因子の違いももちろんあるが、「方言」という問題もある。この研究では「キプロス方言」に対して「ギリシャ語バージョン」がうまく機能したということであるが、方言と標準語の「距離」は様々であ…

(Lerner, Mikami & Levine 2011) 自閉症と演劇療法

自閉症に対する演劇療法に関しては、有効性を主張する研究がいくつか存在する。しかし研究デザインが不十分なものも多く、この研究も例数や効果の評価法の点で満足すべきものとはいえない。もっとも「パイロットスタディ」という位置づけなので、ぜひ今後の…

(Gómez-Ruiz & Aguilar-Alonso 2011) バイリンガル失語検査の能力

バイリンガル失語には様々なパターンがあり、特に日本語を対象とした場合は、現時点では満足すべき性能の検査法は存在しない。本研究ではカタロニア語とスペイン語のバイリンガル患者を扱っているが、これらの言語に対しては比較的信頼性の高い結果が得られ…

(笠貫, 他 2011) 自閉症とSSRI

フルボキサミンはSSRIのひとつで、セロトニンの再取り込みを抑制することにより、シナプスにおけるセロトニン濃度を上昇させる作用がある。日本ではデプロメール、ルボックスなどの商標で販売されている。 自閉性障害に伴う異食行為に対してfluvoxamineが著…

(Goldstein, et al. 2010) バイリンガルの言語能力測定

バイリンガルの言語能力測定には様々な方法がある。測定の目的や環境などによって選択しなければならいのはもちろんだが、測定法の精度も重要な問題である。この報告は、単語平均長といった客観的な尺度よりも、親による熟達度評価のような主観的な尺度のほ…

(Verhoeven, et al. 2011) SLIとバイリンガルは、加算的に言語獲得を障害する

モノリンガルとバイリンガル、正常発達とSLI、これらの2×2の組み合わせで、様々な言語能力の測定をしたところ、SLIバイリンガルの能力が「加算的に」障害されていたという研究。バイリンガルとSLIとが合併しやすいこと、また合併症例が増加していることを考…

(Peristeri & Tsapkini 2011) バイリンガル失語症テスト

心理学では、複数の心理学的試験を組み合わせて行うことを「バッテリー」と呼ぶそうだ。 一般に、バイリンガル失語症の診断は、モノリンガルの失語症と比べるとはるかに困難だ。元々の背景因子としての「バイリンガル」の状態のパラメータ(言語の組み合わせ…

(Green, et al. 2011) トライリンガル失語症の診断

バイリンガル失語症の診断は、モノリンガルに比べると様々な困難がある。ひとつの理由は、もともとの言語状態が両言語で正常範囲でない場合が多いので、症状の適切な評価が困難であること、また各言語ごとに独立した評価が必要であり、さらに各言語ごとの評…

(Dollaghan & Horner 2010) バイリンガルの言語評価

バイリンガルの言語能力の評価は、非常に重要である。特に症状としての言語能力の低下が、本当の言語障害によるものなのか、あるいはバイリンガル学習中の一時的症状なのか、はっきりと鑑別する方法論が今のところ存在しない。バイリンガルに合併する特発性…

(Casimir, et al. 2010) バイリンガル移民の不眠症・うつ病・不安症

バイリンガルはモノリンガルに比較すると、精神的ストレスを受けやすい。そのため不眠症・うつ病・不安症などが発症しやすい状態にある。 この研究では、このような精神的状態の早期発見には不眠症状に注目すべきだとしている。バイリンガルの不眠症患者に対…

(Green, et al. 2010) バイリンガル失語の回復パターン

バイリンガルにおいては、それぞれの言語が脳のどの領域で処理されているかは一定していないと考えられている。それはバイリンガルにおける脳損傷患者の症状発現や言語の回復が、非常に様々なパターンを示すことからも明らかである。個々の症例で言語処理の…

(Thordardottir 2010) SLIバイリンガルの治療

SLIバイリンガルは増加しつつあり、治療法に関する研究も多数行われているにもかかわらず、臨床的効果が明らかな治療法は見つかっていない。その理由の一つは、SLIバイリンガルの個々の症例の背景因子が様々であることが挙げられよう。各症例の特徴に合わせ…

(Abutalebi 2009) バイリンガル失語の回復

バイリンガル人口の増加に伴い、バイリンガル失語の問題も拡大しつつある。しかし、その治療方法どころか、発生メカニズムや診断方法のガイドラインすら確立出来ているとはいえない。それはバイリンガル自体にバリエーションが多く、各言語をコントロールし…

(Paradis 2005) 第2言語学習と特発性言語障害

英語を第2言語として学んでいる小児の英語と、特異性言語障害(SLI)小児の話す英語とは、様々な面で類似している。そのため第2言語学習者の語学力評価は困難であり、しばしばSLIと誤診されやすい。これはバイリンガル教育における、非常に大きな問題である。…