Autism
FTP(フロアタイムプレイ、フロアタイム)は、自閉症児と行動をともにすることにより、コミュニケーションスキルを向上させようとする方法である。行動の主体はあくまで児童側にあり、その意味では行動療法と正反対のアプローチと言ってもいいかもしれない。…
自閉症児は、さまざまなストレス等により気分障害を合併すると、時に自発性が極端に低下してしまう。このような場合、通常は日常的に行える行動が、他人に指示されるまで行えないことがある。この状態を、「指示待ち」と呼ぶようだ。このような症状が疑われ…
ニューロフィードバックを簡単に説明すると、脳波の状態によってビデオやゲームが中断するような装置を使って、被験者の脳波が一定の条件をみたし続けるよう訓練する方法。歴史的には1970年代からおこなわれており、いわゆる代替医療の一つとして欧米ではそ…
自閉症の発症要因に関しては、星の数ほどの研究が行われているにもかかわらず、未だにはっきりとしたことはわかっていない。遺伝要因と環境要因のどちらが発症に寄与しているのかさえも、定説がない状態である。個人的には自閉症は症候群であり、単一の病態…
神経イメージングとは、何らかの方法により特に中枢神経の活動性を画像化し診断に利用しようとするもの。現状ではPETやfMRIなどが主な方法である。神経イメージング上、自閉症の脳には通常とは異なる特徴があり、最近ではそれらの所見とミラーニューロンシス…
2009年のレビューなので「新規」と言うには若干古いものも含まれているかもしれないが、現在も通用する内容だと思う。音楽療法がグレードAというのは、ちょっと驚き。 Ann Clin Psychiatry. 2009 Oct-Dec;21(4):213-36. Novel and emerging treatments for a…
日本ではあまりおこなわれていないようだが、海外では自閉症に対してのω-3脂肪酸による治療の研究がしばしば行われている。日本であまり行われていないのは、ω-3脂肪酸がサバ、マグロ、イワシ、サンマ、ブリ、サケ、ニシンなどに豊富に含まれているため、通…
低機能自閉症であっても、コミュニケーション能力発達の潜在的能力を持っている場合が多い。また、常同行動などの特異的な症状も、低レベルのコミュニケーション能力の表れとして解釈可能である。自閉症の能力の発達は、通常の発達とは異なり、かなり年長の…
自閉症者とコミュニケーションを取る場合、音声による言語だけよりも、視覚情報を利用した方法が有効である場合が多い。PECSに関しては (Ganz, et al. 2011) 自閉症にPECSと音声発生装置が有用 - Record of Self-Development でも少し記載したが、積極的に活…
自閉症患者の視覚情報の処理の方法は、一般の人とはかなり異なっている。一般の人はまず全体像からどの部分にプライオリティを置くべきか確認し、登場人物などがいればその状況を重点的に把握しようとする。一方で自閉症患者はそのようなプライオリティを十…
自閉症は年齢により症状の出現が変化する。2~3歳程度であれば、診断は比較的難しくない。青年期であっても、積極型と孤立型では診断は容易であるが、受動型では特徴的な所見が余り無いため、診断が困難である。このような場合には、過去の症状を診断の参考と…
自閉症スペクトラム障害にとって、歯周病や歯槽膿漏は非常に厄介な問題である。通常の方法では対応できず、診療困難な場合も多いと考えられる。 スケーリング・ルートプレーニングとは、歯石やプラークを除去する方法の一つ。スケーラーと呼ばれる器具を使っ…
自閉症の演劇療法に関する研究は海外ではそれほど珍しくないが、日本ではあまりおこなわれていないようだ。この研究は5〜6歳時の軽度発達障害児へ8ヶ月間心理劇を行ったという研究。評価方法や研究デザインなどに問題があるものの、一定の効果は確認できたと…
リスペリドンは日本では統合失調症の保険適用しか認可されていないが、自閉症に対しても認可している国も多い。自閉症のさまざまな症状に対しても有効性は十分確立されているので、日本でも自閉症に対しての適応拡大が望まれている。クロアチアでは、15歳以…
PECSとは、自閉症患者とのコミュニケーションに、このような絵の書かれたボードを使う手段。比較的一般的に使われている方法である。それに比べると、音声発生装置が有用という報告は珍しいかもしれない。今度、息子で試してみよう。 J Autism Dev Disord. 2…
バイリンガルの自閉症に関する研究は限られており、一定の見解は得られていないようだ。この研究では全般的にバイリンガル自閉症の言語スキルの高さが主張されているが、そもそも自閉症スペクトラムには様々な言語・知的レベルの症例が含まれており、個人的…
詳しいメカニズムは不詳だが、自閉症とてんかんとは合併頻度が高い。しかもこのレビューによれば、一般集団よりも難治性のてんかんが多く、さらに一般の難治性てんかんよりもさらに難治性だという。症例数があまり多くないので、この結果をそのままうのみに…
アリピプラゾール(エビリファイ)はドパミン受容体やセロトニン受容体に作用する薬剤であり、感情表出能力、無為・自閉、幻覚、妄想などの症状の改善が期待できる。日本での適応症は統合失調症のみであるが、米国では自閉症児の癇癪に対しても適応症として…
漢方といっても、いわゆる漢方薬ではない。推拿(すいな)療法という、中国式の整体療法が自閉症の改善に有効だったという研究。「知覚」や「自己制御」を改善すると言うが、評価方法も主観的であり、エビデンスレベルとしてはあまり評価できない。それにして…
自閉症におけるミラーニューロンシステムの障害は、以前より指摘されてきた。この論文では、加齢にともなってその機能が改善することが示された。何歳程度まで改善が続くのかはわからないが、小児期のうちにあきらめてしまうことなく、症状改善へ向けての努…
自閉症の言語発達は、正常発達時に比べると遅い。始まりが遅いだけでなく、かなり遅い時期まで発達を続ける。従って自閉症の言語教育は、例え良い結果が認められなくても、根気づよく長期間にわたって続けることが重要である。 Eur J Neurosci. 2011 May 25.…
自閉症に対する演劇療法に関しては、有効性を主張する研究がいくつか存在する。しかし研究デザインが不十分なものも多く、この研究も例数や効果の評価法の点で満足すべきものとはいえない。もっとも「パイロットスタディ」という位置づけなので、ぜひ今後の…
フルボキサミンはSSRIのひとつで、セロトニンの再取り込みを抑制することにより、シナプスにおけるセロトニン濃度を上昇させる作用がある。日本ではデプロメール、ルボックスなどの商標で販売されている。 自閉性障害に伴う異食行為に対してfluvoxamineが著…
自閉症発症のメカニズムは、次第に明らかにされつつある。もちろんすべての自閉症がSLC6A4遺伝子の変異で発症しているわけではないと思うが、このような研究が近い将来に自閉症の早期発見や根本的な治療に結びつくことを切に願っている。 Mol Genet Metab. 2…
最近自閉症とオキシトシンとの関連性がクローズアップされている。しかし自閉症は単一疾患ではなく、症状の近い疾患の集合体としての症候群である。オキシトシンのみですべての症例を説明できるとは考えにくい。GABAニューロンも、少なくとも一部の自閉症発…
自閉症からは、一生逃れることができない。自閉症として生まれてきたからには、自閉症という状態と一生共存していかなければならない。今のところ有効な治療法はない。そして、その有病率は上昇しつつあるという有力なエビデンスがある。どうすればいいので…
この結果から、ADHDの中には食事が原因のものも存在していると言っていいのだろう。当然のことながら、食文化の異なる日本で同じことをやっても、まったく同じ結果は期待できない。しかも、ADHDは「症候群」であり、実態としては様々なメカニズムの病態が混…
様々な精神疾患における行動障害と、ドーパミン・オキシトシンの相互作用が関連していることが解明されつつある。研究が進めば、治療や高精度の早期診断に役立つことが期待できる。 CNS Neurosci Ther. 2010 Jun;16(3):e92-123. Dopamine and oxytocin inter…
感染とか毒素とか、いろいろとかなり怪しい論文。「免疫システムの欠損は、今までに研究された大多数の自閉症患者で生じている。」なんて話、聞いたことないし。こんなもの読むに値しないですね。 Acta Neurobiol Exp (Wars). 2010;70(2):141-6. The review …
自閉症は早期介入が重要であるが、そのために必要な早期発見の研究も進歩を続けている。 Curr Opin Neurol. 2010 Apr;23(2):97-102. Advances in the early detection of autism. Zwaigenbaum L.Department of Pediatrics, University of Alberta, Glenrose …