海外における学校の選択肢:第3の可能性

バランス・バイリンガルを目指すためには、どのような教育施設を選ぶのがベストなのか? それを考えるためには、まずどのような選択肢があるのかを把握しなければならない。中島は①全日制の日本人学校、②現地校+補習校(塾)の二つを挙げている。

全日制の日本人学校バイリンガル
  • 海外子女の受け入れ先としてまず挙げられるのが、全日制の日本人学校である。(中略)海外子女のための全日制日本人学校はシェルタースクールの一例といえよう。
  • もうひとつの選択肢が、現地校の選択である。現地校だけでは日本語が失われるため、バイリンガルとなるためには日本語の補習も必要となる。

1. 日本人学校

  • 海外にある日本人学校を紹介します:文部科学省
  • 法律上の明確な定義はないが、文部科学省の分類では在外教育施設のうち現地の日本人会等が設置したものを指す。もともと補習授業校だったものが、実績を積んで在籍生徒数を増やすことで全日制に「昇格」したものが多い。
  • 日本の小中学校と同一の教育プログラムである。L2学習が不足するため、バランス・バイリンガルの育成には向いていない。

2. 補習授業校


そして実はもう一つ選択肢がある。それが「私立在外教育施設」である。

3. 私立在外教育施設

かつては多くの学校が存在したが、バブル景気崩壊後、日本企業の海外駐在員数減少や少子化、寄付金の減額などが原因で生徒の確保が困難となり、すでに閉校した学校も多い。

小学校として現在も生徒を募集しているのは、たった3校のみである。

西大和学園カリフォルニア校

教育方針に関しては、「校長挨拶」に非常に明確に書かれています。

西大和学園における理想の英語教育に対するポリシー

日本での英語教育に対する熱はかなり高いものがあります。自分の子がバイリンガルになることは、多くの皆さんの夢かと思いますが、英語圏に転勤と辞令が出れば、現地校編入を真っ先に考えていいのでしょうか。「アメリカに転勤だって!いいねぇ。○○ちゃんはすぐにバイリンガルになって、英語ペラペラだね。」と言われて渡米する子がほとんどですが、現実はそんなに簡単な話ではありません。
1. ダブル・リミテッド・バイリンガルになってしまうことを避けなければいけない
(中略)
2. 第一言語である日本語読解力習得を軽視してはならない
(中略)
3. 小学校低学年で習得した英語が短期間で抜けていく
(中略)
西大和学園における英語教育では、上記の3つを避けるために、日本語の国語力をしっかりと身につけさせます。さらに、せっかく英語圏に住まれているのですから、アメリカ現地校との交流もさかんに導入し異国文化を学びます。そして日本語力を侵さない程度に、英会話クラスを毎日行って英語力をつけさせます。お父様の赴任期間が終了し、日本の学校に入学・編入する時には日本にいる子供たちよりも日本の学力をつけていると同時に、英語力はクラスの中でトップになります。(以下略)

SLIバイリンガルを避けつつ、将来へ向けて英語力を伸ばすという明確な目標意識が感じられます。バランス・バイリンガルを目指すひとつの戦略として、非常に参考になります。

聖学院アトランタ国際学校

この学校では、パーシャル・イマージョン(Two-Way Immersionと呼んでいる)を採用しています。

メソード - Two-Way Immersion教育
2004年度に開始したツーウエイ・イマージョン教育は、日本の教育とアメリカの教育の流れを見据えながら、その中の最も優れたものを取り込みつつ、将来の国際人を育てるために、常に新しくなっていきます。

パーシャル・イマージョンの成績は以下のようにトータル・イマージョンに劣りますが、この学校がどのような成果を挙げているのか興味のあるところです。

日英カリキュラムの融合

本校のカリキュラムは、文部科学省の学習指導要領に基づいて編成されています。これに英国人による授業を可能な限り取り入れ、さらに英国にあるアドバンテージを生かした独自の学習方法を盛り込んだのが本校カリキュラムの特徴です。

安心できる日本語教育
基本的な学習言語は日本語ですから思考や情緒の基礎を形成する多感な時期に不安定な言語環境にいて心身の成長に支障をきたす心配はありません。熟練した日本人スタッフによる授業は、基礎から大学受験を意識した演習までカバーしており、日本の学校のそれに比しても決して遜色のないものです。英国にありながら日本と同様の充実した授業を受けることができるわけです。

「国際人」を生み出す英国教育
日本の環境とは全く異質の「英語圏」で学ぶということは、生きた英語を自然に習得できる絶好のチャンスであるだけではありません。それは日本の教育とは全く異なった観点からの学習を体験できる貴重な場でもあります。例えば実験とそのレポートを中心に進められていく英国の理科教育(I.G.C.S.E.)、ロンドンからも専門家を招いて行われている音楽教育、アプローチや切り口が日本とはひと味違うアートの授業等、「言語」以外のところから「英国」を実感し学んでいける環境は、将来「国際人」として世界を舞台に活躍できる柔軟で創造的な思考を育む、豊かな土壌となっています。

たった3校だけですが、それぞれ特色ある教育方針を持っています。淘汰の結果、きちんとしたビジョンのある学校だけが生き残れたということかもしれません。