(中井 2010) 知能検査による自閉症児と精神遅滞児の鑑別

知能検査による自閉症児と精神遅滞児の鑑別 (原著論文)

Author:中井靖 (川崎医療短期大学 医療保育科)
Source:川崎医療短期大学紀要(0287-3028)30号 Page83-87(2010.12)
Abstract:本研究では, 自閉症スペクトラム障害 (ASD; Autism Spectrum Disorder) の能力のばらつきについて定量的に解明することを目的とし, ASD児と精神遅滞 (MR; Mental Retardation) 児に対して日本版ウエクスラー式児童用知能検査第3版を実施し, それぞれの言語性知能指数 (VIQ; Verbal Intelligence Quotient) と動作性知能指数 (PIQ; Performance Intelligence Quotient) の傾向を統計的手法を用いて調べた. その結果, .ASD群はMR群と比べ, 言語性能力と非言語性能力がともに有意に高い, .ASD群は言語性能力が非言語性能力と比べて有意に低い, .MR群は言語性能力と非言語性能力に有意な差がない, .両群のVIQとPIQの差 (VIQ-PIQ) の平均値には有意な差がある, .両群を鑑別する値, すなわちカットオフポイントは VIQ - PIQ = -6 であることが明らかになった. 以上から, 個人内の言語性能力と非言語性能力の差, つまり両者のばらつきの傾向を調べることは, ASD児とMR児の鑑別診断に役立つことが示唆された. (著者抄録)