(小林 1985) 自閉症児の経過観察

自閉症時の精神発達と経過に関する臨床的研究(原著論文)

Author:小林隆児(福岡大学)
Source:精神神経学雑誌(0033-2658)87巻8号 Page546-582(1985.08)
Abstract:治療教育的関わりを持ち続けながら発達経過を観察してきた自閉症児の中で現在12歳以上に達しているもの90例(男性74例,女性16例)を対象に現在の転帰その精神発達と経過及びそれに関連する要因を検討した.1) 18歳以上の30例で社会的に自立ないし自立が期待できるもの8例が従来に比し改善を示した.2)現在の発達水準は知能面では良好群28%,やや遅れのある群22%,不良群50%,適応面では各々36%,16%,49%と知能面より適応面で良好なものが多かった.3)臨床症状は極めて多様の現象を示していたが性に関する発達は乏しかった.4)てんかんの発現率は14.4%.5)思春期中期以降では知能面に比して良好な適応を示すものが多かった.6)発達経過の中で顕著な改善ないし悪化を示したものが30例認められた.7)発達経過に関連する要因として就学時知能レベル,折れ線型経過とその出現時期,てんかんの合併,医療機関とのつながり,及び両親とりわけ父親の養育態度を指摘した.8)さらに思春期中期以降教科学習から働くという質の異なった発達課題が問題となっていく中で特に自閉症児にとって働くことの意味とその意義について強調した

適応の面では、少なくとも思春期中期以降までは改善の可能性がある。