(中島 2001) バイリンガル教育の方法 12歳までに親と教師ができること 第1章

バイリンガル教育の方法―12歳までに親と教師ができること

今日はこの本で勉強。著者は言語学の専門家で、現在はトロント大学の名誉教授とのこと。

第1章★バイリンガルとは?

バイリンガルの定義

バイリンガルの定義で成功した人はまだいないと言われるほど、バイリンガルという言葉の意味は複雑で捉えにくいが、ここでは問題をはっきりさせるために、「2つの言葉をきちんと使い分ける力を持った人」として話を進めたい。

ここは自分でも疑問に思っていたこと。バイリンガルとはなんなのか。普通の日本人でも中学で英語を習えば、とりあえずは簡単な英語は話せる。でもその人をバイリンガルとは呼ばない。ではそんな人達と「バイリンガル」との決定的な違いはなんなのか? 残念ながら中島氏の定義を読んでも、私の疑問は解消しない。「きちんと使い分ける力」とは具体的に何を意味しているのか。単なるトートロジーに過ぎないように思われる。

成長期の子どもの場合

子どものバイリンガル教育の問題は、例えば上のような状況を乗り越えて、どうしたら2言語がより良く発達するか、どのような教育的介入をすればマイナスの影響を最小限にとどめ、年齢相応の学力が獲得できるかなどについて、長期的な構えで考えなければならないのである。2言語の発達途上でおこるある一時期の現象を問題にして、バイリンガルではなく、セミリンガル(両方のことばの力が低い)であるなどと決めつけてしまってはいけない。この意味で、子どものバイリンガルは常に2つのことばの力を流動的に捉えて、長い目で見る必要がある。

私は「セミリンガル」ということばを大分誤解していたようである。成長期に第2言語を学習するときに一時的に両言語のレベルが低下する問題は、「セミリンガル」とは呼ばない。そんな現象は、あまり心配は要らないのであろう。一時的セミリンガルという言葉は、そもそも存在しないというわけだ。逆に言えば、「セミリンガル」は一時的な現象ではなく、永続する障害ということだ。

しかし「一時的な言語レベル低下」と「永続的なセミリンガル」を、成長期の時点で区別する方法はあるのだろうか? 「長い目で見る必要がある」ということは、その時点では区別がつかないということを意味している。となれば、バイリンガルを育てるためには、セミリンガルとなってしまうリスクは避けられないということなのか? 結果が出るまでは、うまくいっているのかどうかわからないものなのか?

バイリンガルの分類:到達度 (Cummins 1978 a, 1978 b)

そういえば、カミンズもトロント大学ですね。

バランス・バイリンガル
年齢相応のレベルまで、どちらのことばも高度に発達している
ドミナントバイリンガル
一方が年齢相応、もう一方は不十分
ダブル・リミテッド・バイリンガル
どちらのことばも年齢相応のレベルに達していない

めぐちゃんは、バランス・バイリンガルを目指す。それ以外になることは許されない。ここで注目すべきは、ことばの発達の問題は知的発達の問題であるということ。セミリンガルが永続するように、知的発達の障害も永続する。そうなることは、絶対に避けなければならない。

バイリンガルの分類:4技能

このあたりになると、さすがの私もちょっとバテぎみ。
ことばには4つの技能があり、どの技能が使えるかでバイリンガルを分類するというもの。ここで4技能は以下を指す。

  1. 聞く
  2. 話す
  3. 読む
  4. 書く

数学的には各技能の有無の組み合わせで 2^4=16 通りの組み合わせができるけど、実際には聴解型バイリンガル、会話型バイリンガル、読み書き型バイリンガルの3種類に分類するようだ。

バイリンガルの分類:教育目標 (Fishman 1976)

私や裕子にとっては、この分類が一番重要かもしれない。目指すべきバイリンガルによって、それに適した教育は違ってくる。教育の目標による分類は参考になりそうだ。

過渡期バイリンガリズム transitional bilingualism
主要言語の授業についていけるようになるまで一時的に2言語を併用するもの。米国のバイリンガル教育はこれで、最終目標は主要言語(英語)のスキル上達のみ。母語がどうなるかは気にしない。
読み書き1言語バイリンガリズム monoliterate bilingualism
家庭での会話は母語で、学習は主要言語とするのが目標。技能分類の会話型バイリンガルを目指すもの。移民受け入れ先の多くはこの方法。
部分的バイリンガリズム partial bilingualism
2言語での会話・読み書きを目指すが、学問は主要言語のみ。ブラジルでの日本語学校は日本語の読み書きも教えるが、算数・理科・社会などは現地語でおこなう。
フルバイリンガリズム full bilingualism
バランス・バイリンガルを目指す教育。我々が目指すべきはこれである。カナダのイマージョン方式がこれに当たる。
まとめ