(古荘 2010), (古荘, 松嵜, 奥山 2004), (根本, 他 2003), (伊藤, 他 2002) 自閉症とアニマルセラピー

現状では、自閉症に対するアニマルセラピーの効果は立証されていない。日本で行われた研究は、いずれもエビデンスレベルを満足させるようなレベルとは言いがたい。

精神科医療における「動物」(アニマル・セラピー) 広汎性発達障害とイルカ介在療法(原著論文)

Author:古荘純一(青山学院大学 教育人間科学部教育学科)
Source:精神神経学雑誌(0033-2658)112巻6号 Page576-580(2010.06)

Abstract:広汎性発達障害の子どもを対象としたイルカ介在療法を、家族・医療者とともに宿泊して過ごす「ドルフィンキャンプ」の一環として、延べ37組の親子に実施した。キャンプとしての共通した効果は見出せなかったが、家族の満足度は非常に高く、何らかの好ましい変化が個々に見られることが多かった。イルカ介在療法は、広汎性発達障害の支援原則、すなわち一次障害に早期に気づいて適切な支援を開始することにより二次合併症を予防することには合致していると言える。ドルフィンキャンプにおいて、支援者が勇気づけられること、広汎性発達障害の子どもの不安や下緊張状態の改善などの効果が予測される。しかし、イルカ介在療法が広汎性発達障害の中核障害そのものを変化させるという、明確な学術的評価は得られていない。その上、相当の費用と人手を要する一方で、アレルギーや事故の危険性、動物愛護の観点からの反対意見も存在するなど、慎重な検討を要する。

【子どもの危機を突破せよ 故飯倉洋治教授と歩んだ道】 自閉症児を対象としたドルフィンキャンプの試み(原著論文/特集)

Author:古荘純一(昭和大学 医学部小児科), 松嵜くみ子, 奥山眞紀子
Source:子どもの健康科学(1348-0731)5巻1号 Page28-31(2004.11)

Abstract:1998年から2002年までに、自閉症児とその家族を対象に、計6回のドルフィンキャンプを実施した。キャンプは、家族、スタッフともに宿泊で行い、午前・午後それぞれ、対象児童の体調や発達に合わせたドルフィンプログラムを施行した。個人差が大きく、客観的な効果判定は出来なかったが、陽性感情の増加、人間関係の改善、言葉の発達、絵画で観察された表現力の向上などを認めた。また、参加者からも高い評価が得られた。

自閉性障害児に対するドルフィンキャンプについて(原著論文)

Author:根本芳子(昭和大学 医学部 小児科学 教室), 古荘純一, 奥山眞紀子, 松嵜くみ子, 柴田玲子, 飯倉洋治
Source:小児の精神と神経(0559-9040)43巻2号 Page139-145(2003.06)

Abstract:2001年度ドルフィンキャンプに参加した自閉性障害児1例(7歳女児)のキャンプ前後の変化を、母親からみたアンケート・日記・行動表を用いて検討した。その結果、アンケートでは、キャンプ後に19項目中14項目で問題行動が減少、もしくは陽性感情が増加し、特に問題行動と母親が受け止めていた、こだわる、パニック・かんしゃくの項目の改善がみられた。日記からの記述では、キャンプ前は不安などマイナス面のことが多く書かれていたが、キャンプ中は母親自身楽しい感じ、感動の増大などの記述が増え、プラス面への変化がみられた。行動質問表からは、キャンプ前後では言語問題のみプラス変化がみられた。今回のキャンプには、本児の他に6例の患児とその家族が参加しており、いずれもキャンプ後に対人関係・社会性の改善、言語面での改善がみられ、1年後も感情面、対人社会面での変化が維持されていた。

発達障害児におけるイルカ介在療法のシステム作りとその有用性(原著論文)

Author:伊藤真美(国立小児病院), 二瓶健次, 白川公子, 佐藤裕子, 酒井裕子, 福島広太郎, 富田秀司, 出口宝, 小張一峰
Source:健康医科学研究助成論文集17号 Page1-9(2002.03)

Abstract:医療従事者及び教育関係者が携わりながら、より円滑で効果的なDAT(イルカ介在療法)が日本においても定期的に実施できるための、ガイドライン及びシステムを作成し、精神、運動、行動等に問題を持つ16名の患児とその家族を対象にDATを実施し、問題点の改善を試みた。その結果、医療や教育関係者との連携を保ちながら、疾患の種類や年齢層に関係なく、又、年間を通して国内でDATを実施することが可能となった。今回、参加した患児は8名で、3歳から11歳の男児7名、女児1名であった。疾患別では自閉症が3名、精神運動発達遅滞が2名、広汎性発達障害、チック、被虐待症候群が各々1名であった。自閉症・広汎性発達障害ではDATは様々な意義を持つ療法であるが、その反面、効果が認められたとしてもコストや時間的な問題で定期的に継続することが難しいことや、他の動物介在療法と同様に客観的評価や評価の定量化が図れないことなど問題もあり、さらなる研究が必要である。