(Munesue, et al 2010), (東田, 他 2010), (東田, 棟居 2010), (Xiaoxi, et al. 2010), (平井 2009), (東田 2007) 自閉症とオキシトシン障害

http://physiology.jp/data/images/pict20070502111622.jpg最近、CD38遺伝子の異常によるオキシトシン障害が自閉症の原因の一つと考えられるようになってきた。研究が進めば、将来的には有望な治療法へ進展するかもしれない。

自閉症圏障害患者と健常者におけるCD38の2つの遺伝変異体(Two genetic variants of CD38 in subjects with autism spectrum disorder and controls)(英語)(原著論文)

Author:MunesueToshio(金沢大学 21世紀COEプログラム発達・学習・記憶と障害の革新脳科学の創成), YokoyamaShigeru, NakamuraKazuhiko, AnithaAyyappan, YamadaKazuo, HayashiKenshi, AsakaTomoya, LiuHong-Xiang, JinDuo, KoizumiKeita, IslamMohammad Saharul, HuangJian-Jun, MaWen-Jie, KimUh-Hyun, KimSun-Jun, ParkKeunwan, KimDongsup, KikuchiMitsuru, OnoYasuki, NakataniHideo, SudaShiro, MiyachiTaishi, HiraiHirokazu, SalminaAlla, PichuginaYu A., SoumarokovAndrei A., TakeiNori, MoriNorio, TsujiiMasatsugu, SugiyamaToshiro, YagiKunimasa, YamagishiMasakazu, SasakiTsukasa, YamasueHidenori, KatoNobumasa, HashimotoRyota, TaniikeMasako, HayashiYutaka, HamadaJunichiro, SuzukiShioto, OoiAkishi, NodaMami, KamiyamaYuko, KidoMizuho A., LopatinaOlga, HashiiMinako, AminaSarwat, MalavasiFabio, HuangEric J., ZhangJiasheng, ShimizuNobuaki, YoshikawaTakeo, MatsushimaAkihiro, MinabeYoshio, HigashidaHaruhiro
Source:Neuroscience Research(0168-0102)67巻2号 Page181-191(2010.06)

Abstract:自閉症圏障害(ASD)と健常者の剖検脳を用いて、オキシトシン(OT)放出を通じた社会認識におけるCD38の役割について免疫組織化学的、遺伝解析学的に調べた。その結果、健常者では分泌細胞内でCD38はOTと共存した。CD38の一塩基多型(SNPs)rs6449197、rs3796863はアメリカの自閉症の1subset(IQ>70、高機能自閉症:HFA)と有意に相関したが、日本のHFA188名では相関しなかった。アミノ残基140のトリプトファンからアルギニンへの変異(R140W)を0.6〜4.6%の日本人患者で認めた。Tアレルキャリア自閉症患者の家族、父親と兄弟でSNPsが集中発生し、Tアレルを持つ群は持たない群より血漿OTレベルは低かった。OT経鼻投与したTアレル-自閉症患者の一人に症状の改善を認めた。二つの変異体CD38多型は自閉症の病生理学を考慮する上で興味深いと考えた。

オキシトシンとバゾプレシン 社会性認知行動と信頼の神経化学的基盤(総説)

Author:東田陽博(連合小児発達学研究科金沢校 こころの相互認知科学講座), 小泉恵太, 吉原亨, 棟居俊夫
Source:子どものこころと脳の発達(2185-1417)1巻1号 Page80-89(2010.06)

Abstract:オキシトシンバソプレシンは中枢では、扁桃体をはじめとする「社会脳」領域を介して社会性行動、特に「信頼を基礎とするあらゆる人間相互間活動」にも影響を与えることがわかってきた。また、マウスではつがい形成、仲間の保護、子育てに関与する。こうしたオキシトシンバソプレシンと「信頼」「自閉症との関連」についての研究を中心に解説した。

脳の科学Up Date オキシトシン発達障害(解説)

Author:東田陽博(金沢大学子どものこころの発達研究センター 相互認知研究基礎部門・臨床部門), 棟居俊夫
Source:脳21(1344-0128)13巻2号 Page211-214(2010.04)

Abstract:オキシトシンは末梢器官においては子宮収縮や乳汁分泌を促す。中枢では、扁桃体をはじめとする「社会脳」領域を介して社会性行動、特に「信頼を基礎とするあらゆる人間相互間活動」にも影響を与えることがわかってきた。オキシトシンは人で愛情や信頼の形成に関与している。オキシトシン遺伝子、オキシトシン受容体やオキシトシンの脳内分泌を制御するCD38などがそれらの機能に関係する。それらの遺伝子や分子の欠損や異常が、広汎性発達障害自閉症の良い対人関係を構築できない社会性障害の原因ではないかと考えられるようになってきた。オキシトシンの投与により一部の症状に改善が見られる事が報告されだしてきた。我々の経験した一例についても報告する。(著者抄録)

日本人におけるオキシトシン受容体(OXTR)遺伝子多型と自閉症スペクトル障害(ASD)との関連(Association of the oxytocin receptor (OXTR) gene polymorphisms with autism spectrum disorder (ASD) in the Japanese population)(英語)(原著論文)

Author:LiuXiaoxi(東京大学 医学系研究科人類遺伝学), KawamuraYoshiya, ShimadaTakafumi, OtowaTakeshi, KoishiShinko, SugiyamaToshiro, NishidaHisami, HashimotoOhiko, NakagamiRyoichi, TochigiMamoru, UmekageTadashi, KanoYukiko, MiyagawaTaku, KatoNobumasa, TokunagaKatsushi, SasakiTsukasa
Source:Journal of Human Genetics(1434-5161)55巻3号 Page137-141(2010.03)

Abstract:family-based association test(FBAT)と地域住民をベースにした対照試験により、11のOXTR一塩基多型(SNP)を分析し、ASDとの関係を検討した。FBATテストでは有意な関連は検出されなかったが、症例対照試験において患者群と対照群との間に、rs2254298等四つのSNPの対立遺伝子頻度における有意差が観察された。rs2254298のリスク対立遺伝子は「A」で、この結果は既報告の中国人における研究と一致したが、白色人種における結果とは異なっていた。この相違は、アジア人と白人との連鎖不均衡構造における人種的違いによるものと思われる。更に、ハプロタイプ分析により、rs2254298等五つのSNPハプロタイプASDとの間の有意な関連が示された。以上より、日本人においてOXTRはASDのリスク保有に重要な役割を果たしていることが示唆された。

生殖医学 基礎分野での進歩 最近の知見からみるオキシトシンと母性の新しい概念(解説)

Author:平井宏和(群馬大学 大学院医学系研究科神経生理学)
Source:Annual Review糖尿病・代謝・内分泌2009巻 Page196-201(2009.01)

Abstract:オキシトシンは下垂体後葉から血中に放出され、乳汁分泌と子宮収縮を促進するホルモンとして知られている。しかし、オキシトシンは脳内にも放出され、脳の様々な領域に存在するオキシトシン受容体の活性化を介して母性発現や社会行動に深くかかわっていることがわかってきた。オキシトシンの放出には、視床下部神経細胞内のCa2+の上昇が必要である。特にCD38を介したリアノジン感受性Ca2+ストアーからのCa2+放出機構が重要であり、CD38の変異によりオキシトシン放出障害をきたす可能性がある。実際、CD38の酵素活性が1/3に低下する変異もヒトで見つかっており、オキシトシン濃度と社会行動について研究が行われている。オキシトシンを介する脳内の信号伝達経路の障害と、育児放棄をはじめ様々な社会行動異常、さらにはAsperger症候群や自閉症との関連が多数報告されており、合成オキシトシンの投与がこれらの治療に有効であることが明らかになりつつあり、製薬会社が合成オキシトシンの商品化を進めている。(著者抄録)

【子どものこころのひずみの科学的解析】 オキシトシンの遊離 子育てと相互認識の記憶に必要なCD38(解説/特集)

Author:東田陽博(金沢大学 21世紀COEプログラム革新脳科学)
Source:脳21(1344-0128)10巻3号 Page252-255(2007.07)

Abstract:膜タンパク質CD38の脳内の生理機能に今まであまり関心が払われなかった。今回、我々は、CD38が視床下部ホルモン・オキシトシンの血中及び脳内への遊離に関与し、他者を認識し記憶して行動することや、子育てをまともに行うことに深く関わっていることを解明した。CD38機能が大きく低下する変異が人で見つかっており、CD38の変異が自閉症アスペルガー症候群などの一因となっている可能性がある。(著者抄録)