(森 2010) 自閉症とGABA

最近自閉症オキシトシンとの関連性がクローズアップされている。しかし自閉症は単一疾患ではなく、症状の近い疾患の集合体としての症候群である。オキシトシンのみですべての症例を説明できるとは考えにくい。GABAニューロンも、少なくとも一部の自閉症発症メカニズムと関連している可能性がある。将来的には、診断や治療への臨床応用の可能性も考えられる。

自閉症スペクトラムへの対応 児の将来を念頭に 医療的対応(解説)

Author:森健治(徳島大学 大学院発生発達医学講座小児医学)
Source:脳と発達(0029-0831)42巻3号 Page199-203(2010.05)
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Abstract:自閉症の様々な症状からその生化学的異常の候補として神経伝達物質などが、分子生物学的および神経放射線学的に詳しく調べられている。しかし、すべての自閉症患者に共通する生化学的異常はまだ見出されていない。本稿では自閉症に関連するセロトニン神経系、ドパミン神経系、GABAニューロンオキシトシン神経、メラトニンについて概説するとともに、薬物療法の開発の現状について紹介した。特にGABAニューロンに関しては、1H-MRSを用い前部帯状回にてGABA濃度が自閉症で低下していることを明らかにした。このような研究により自閉症の本態が解明され、自閉症の中核症状に対する薬物療法が開発されることが期待される。(著者抄録)