(黒川 2010) 自閉症と演劇療法

自閉症の演劇療法に関する研究は海外ではそれほど珍しくないが、日本ではあまりおこなわれていないようだ。この研究は5〜6歳時の軽度発達障害児へ8ヶ月間心理劇を行ったという研究。評価方法や研究デザインなどに問題があるものの、一定の効果は確認できたと言って良いだろう。

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軽度発達障害のある幼児に対する心理劇(原著論文)

Author:黒川祐美子(熊本県ひばり園)
Source:心理劇(1342-4890)15巻1号 Page37-46(2010.12)
Abstract:高機能自閉症アスペルガー症候群などの軽度の発達障害幼児の支援方法の1つとして療育活動への心理劇の導入を試みた。言語・コミュニケーション面に課題を持つ軽度発達障害幼児(5〜6歳児7名、男6名、女1名)に8ヵ月間(46セッション)の心理劇を中心とした集団療育を行った。3事例を中心に経過の分析を行った。短期間の実践ではあったが、対人関係に問題を持つA児(ASD)は苦手な仲間とも遊べるようになり、行動面に問題を持つB児(HFA)は思いを伝えられるようになったことで噛みつき行動が消えた。また、言語面に問題を持つC児(HFPDD)は他児との会話や関わりを楽しめるようになった。軽度の発達障害幼児の療育に心理劇を導入することの意義として「コミュニケーションの場」「気持をことばにする場」「行動調節力を向上させる場」の提供の可能性が示唆された。