Specific Language Impairment

(Verhoeven, et al. 2011) SLIとバイリンガルは、加算的に言語獲得を障害する

モノリンガルとバイリンガル、正常発達とSLI、これらの2×2の組み合わせで、様々な言語能力の測定をしたところ、SLIバイリンガルの能力が「加算的に」障害されていたという研究。バイリンガルとSLIとが合併しやすいこと、また合併症例が増加していることを考…

(Thordardottir 2010) SLIバイリンガルの治療

SLIバイリンガルは増加しつつあり、治療法に関する研究も多数行われているにもかかわらず、臨床的効果が明らかな治療法は見つかっていない。その理由の一つは、SLIバイリンガルの個々の症例の背景因子が様々であることが挙げられよう。各症例の特徴に合わせ…

(Paradis 2005) 第2言語学習と特発性言語障害

英語を第2言語として学んでいる小児の英語と、特異性言語障害(SLI)小児の話す英語とは、様々な面で類似している。そのため第2言語学習者の語学力評価は困難であり、しばしばSLIと誤診されやすい。これはバイリンガル教育における、非常に大きな問題である。…

(Verhoeven, Steenge & Balkom 2011) バイリンガルSLIの診断マーカー

バイリンガルにおけるSLIの発生を抑えることは、現状では不可能である。早期に発見することができれば手遅れになる前に治療的介入を行うことができる。しかし、そもそもバイリンガル教育においては、正常な経過でも「一時的な言語障害」が発生することが知ら…

(Stavrakaki, Chrysomallis & Petraki 2011) バイリンガルSLI発現と各言語の特徴

バイリンガルにおけるSLIの発現には各言語の特徴が影響しているということを、客観的データを持って示した論文。英語・日本語のような、より言語間の距離が離れた組み合わせであれば、SLIの発生はより深刻であろう。 Clin Linguist Phon. 2011 May;25(5):339…

(Pihko, et al. 2007) バイリンガルSLIの脳機能

現時点では、残念ながらバイリンガルSLIを早期に客観的に診断する方法はない。「一時的セミリンガル」と区別がつかないのだ。バイリンガルSLIには早期介入が有効と言われて入るものの、早期診断ができない以上有効な治療手段がないということになる。しかし…

(Kohnert 2010) SLIバイリンガル児の特徴

バイリンガルには特発性言語障害が生じやすい。しかし、早期の診断方法は確立されていない。本稿ではSLIバイリンガル発症時の特徴をレビューし、早期診断の可能性に関して論じている。ただし、現時点ではSLIバイリンガルと「一時的セミリンガル」とを小児期…

(Cleave, et al. 2010) SLIバイリンガルの談話能力

談話能力の評価は、SLIバイリンガルの診断に有効な可能性がある。しかしこの研究で比較しているのは「モノリンガルSLI」と「バイリンガルSLI」であり、「正常バイリンガル」と「バイリンガルSLI」の鑑別に有効かどうかはこの結果からはわからない。 J Commun…

(Jordaan, et al. 2001) バイリンガルと言語障害のタイプ

もともとの言語障害のタイプが、バイリンガルとしての熟達度に影響するという研究。言語発達障害はバイリンガルになりやすいが、特異性言語障害はバイリンガルになりにくい。ただし2例による症例報告なので、解釈にはより大規模な調査が必要だろう。 Folia P…

(Westman, et al. 2008) 言語障害とバイリンガル

言語障害児にバイリンガル教育をおこなっても、小児の言語障害の悪化は認められなかった。 Int J Lang Commun Disord. 2008 Nov-Dec;43(6):699-711. Language profiles of monolingual and bilingual Finnish preschool children at risk for language impai…

(Cheuk, Wong & Leung 2005) 特異性言語障害と多言語への暴露

家庭内での多言語への暴露はSLI発症の独立したリスク因子であり、そのオッズ比は2.94。バイリンガルにSLIが多いことを科学的に証明した研究。一方で、学童期の第二言語の曝露のほうがSLIの危険性が高いと言われており、その場合の相対リスクははるかに高い値…

(Windsor, et al. 2010) バイリンガルSLIと非単語反復

非単語反復の成績は一般の言語障害の診断には有効である。しかしバイリンガルSLIの判定に関しては、あまり有効ではないという研究。バイリンガルSLIの早期診断法の確立が望まれているが、まだ有効な手段は見つかっていない。 Am J Speech Lang Pathol. 2010 …

(Crutchley, Botting & Conti-Ramsden 1997) バイリンガルと非特異性言語障害

バイリンガルのSLIとモノリンガルのSLIは、言語プロフィール等の点で互いにまったく異なる特徴を持った集団だとする研究。 Eur J Disord Commun. 1997;32(2):267-76. Bilingualism and specific language impairment in children attending language units. …

(Kohnert, Windsor & Ebert 2009) 第2言語学習と特異性言語障害

第2言語学習により特異性言語障害の発症リスクが高まる。その発症の予測は重要な課題だが、今のところ有効な方法はない。これは言語発達のパターンから特異性言語障害発症の予測を試みる目的で行われたレビュー。具体的な結論は、抄録からは不明。 Brain Lan…

(Paradis, et al. 2003) バイリンガルSLI発症メカニズム

SLIの発症メカニズムは言語の学習障害にはなく、文法形態学論な問題であるとする研究。 J Speech Lang Hear Res. 2003 Feb;46(1):113-27. French-English bilingual children with SLI: how do they compare with their monolingual peers? Paradis J, Crago…

(Rothweiler, Chilla & Babur 2010) トルコ語ドイツ語バイリンガルの特異性言語障害

歴史的経緯により、バイリンガルSLIの研究が最も進んでいるのはインドヨーロッパ語族の言語間のバイリンガルに対してである。インドヨーロッパ語族同士の言語は言語学上は距離が近い。日本語と英語の距離は離れているため、これらの研究の結果をそのまま日本…

(Girbau & Schwartz 2008) バイリンガルのワーキングメモリ

SLIとTLDの小児の母親間で、ワーキングメモリのパフォーマンスに差が出るのは興味深い。言語的な環境因子と遺伝因子のどちらのインパクトが強いのだろうか? J Commun Disord. 2008 Mar-Apr;41(2):124-45. Epub 2007 Jul 22. Phonological working memory in…

(Uno, et al. 2009) SLIバイリンガル少女「EM」

Cortex. 2009 Feb;45(2):154-63. Epub 2008 Feb 5. Cognitive neuropsychological and regional cerebral blood flow study of a Japanese-English bilingual girl with specific language impairment (SLI). Uno A, Wydell TN, Kato M, Itoh K, Yoshino F. …

セミリンガル、あるいは特異性言語障害を伴うバイリンガル

「バイリンガル教育の方法 第10章」では、セミリンガルの定義としてロングマン応用言語学用語辞典からの引用を使っていた。 セミリンガルという用語について セミリンガルという用語は多岐にわたって使われているが、厳密には以下のような意味であり、言語学…