(Gómez-Ruiz & Aguilar-Alonso 2011) バイリンガル失語検査の能力

バイリンガル失語には様々なパターンがあり、特に日本語を対象とした場合は、現時点では満足すべき性能の検査法は存在しない。本研究ではカタロニア語とスペイン語のバイリンガル患者を扱っているが、これらの言語に対しては比較的信頼性の高い結果が得られ…

(笠貫, 他 2011) 自閉症とSSRI

フルボキサミンはSSRIのひとつで、セロトニンの再取り込みを抑制することにより、シナプスにおけるセロトニン濃度を上昇させる作用がある。日本ではデプロメール、ルボックスなどの商標で販売されている。 自閉性障害に伴う異食行為に対してfluvoxamineが著…

(Goldstein, et al. 2010) バイリンガルの言語能力測定

バイリンガルの言語能力測定には様々な方法がある。測定の目的や環境などによって選択しなければならいのはもちろんだが、測定法の精度も重要な問題である。この報告は、単語平均長といった客観的な尺度よりも、親による熟達度評価のような主観的な尺度のほ…

(Verhoeven, et al. 2011) SLIとバイリンガルは、加算的に言語獲得を障害する

モノリンガルとバイリンガル、正常発達とSLI、これらの2×2の組み合わせで、様々な言語能力の測定をしたところ、SLIバイリンガルの能力が「加算的に」障害されていたという研究。バイリンガルとSLIとが合併しやすいこと、また合併症例が増加していることを考…

(Peristeri & Tsapkini 2011) バイリンガル失語症テスト

心理学では、複数の心理学的試験を組み合わせて行うことを「バッテリー」と呼ぶそうだ。 一般に、バイリンガル失語症の診断は、モノリンガルの失語症と比べるとはるかに困難だ。元々の背景因子としての「バイリンガル」の状態のパラメータ(言語の組み合わせ…

(Green, et al. 2011) トライリンガル失語症の診断

バイリンガル失語症の診断は、モノリンガルに比べると様々な困難がある。ひとつの理由は、もともとの言語状態が両言語で正常範囲でない場合が多いので、症状の適切な評価が困難であること、また各言語ごとに独立した評価が必要であり、さらに各言語ごとの評…

(Dollaghan & Horner 2010) バイリンガルの言語評価

バイリンガルの言語能力の評価は、非常に重要である。特に症状としての言語能力の低下が、本当の言語障害によるものなのか、あるいはバイリンガル学習中の一時的症状なのか、はっきりと鑑別する方法論が今のところ存在しない。バイリンガルに合併する特発性…

(Casimir, et al. 2010) バイリンガル移民の不眠症・うつ病・不安症

バイリンガルはモノリンガルに比較すると、精神的ストレスを受けやすい。そのため不眠症・うつ病・不安症などが発症しやすい状態にある。 この研究では、このような精神的状態の早期発見には不眠症状に注目すべきだとしている。バイリンガルの不眠症患者に対…

(Green, et al. 2010) バイリンガル失語の回復パターン

バイリンガルにおいては、それぞれの言語が脳のどの領域で処理されているかは一定していないと考えられている。それはバイリンガルにおける脳損傷患者の症状発現や言語の回復が、非常に様々なパターンを示すことからも明らかである。個々の症例で言語処理の…

(Thordardottir 2010) SLIバイリンガルの治療

SLIバイリンガルは増加しつつあり、治療法に関する研究も多数行われているにもかかわらず、臨床的効果が明らかな治療法は見つかっていない。その理由の一つは、SLIバイリンガルの個々の症例の背景因子が様々であることが挙げられよう。各症例の特徴に合わせ…

(Abutalebi 2009) バイリンガル失語の回復

バイリンガル人口の増加に伴い、バイリンガル失語の問題も拡大しつつある。しかし、その治療方法どころか、発生メカニズムや診断方法のガイドラインすら確立出来ているとはいえない。それはバイリンガル自体にバリエーションが多く、各言語をコントロールし…

(Paradis 2005) 第2言語学習と特発性言語障害

英語を第2言語として学んでいる小児の英語と、特異性言語障害(SLI)小児の話す英語とは、様々な面で類似している。そのため第2言語学習者の語学力評価は困難であり、しばしばSLIと誤診されやすい。これはバイリンガル教育における、非常に大きな問題である。…

(Adamsen, et al 2011) 自閉症とSERT変異

自閉症発症のメカニズムは、次第に明らかにされつつある。もちろんすべての自閉症がSLC6A4遺伝子の変異で発症しているわけではないと思うが、このような研究が近い将来に自閉症の早期発見や根本的な治療に結びつくことを切に願っている。 Mol Genet Metab. 2…

バイリンガル失語症

バイリンガルに言語障害はつきものであるが、そのなかでも最悪の状態が「バイリンガル失語症」である。バイリンガル失語症と一口にいっても、例えば障害を受けているのが第一言語なのか第二言語なのか両方なのか、障害のタイプはウェルニッケ失語なのかブロ…

(Kilgore 2011) バイリンガルの語彙獲得

バイリンガルの語彙力は、言語に曝されるほど発達する。またバイリンガルにとっては、語彙の理解よりも産生の方が難しい。 The Plymouth Student Scientist, Vol 4, No 1 (2011) Vocabulary acquisition in bilingual children: Are they more delayed in En…

(Verhoeven, Steenge & Balkom 2011) バイリンガルSLIの診断マーカー

バイリンガルにおけるSLIの発生を抑えることは、現状では不可能である。早期に発見することができれば手遅れになる前に治療的介入を行うことができる。しかし、そもそもバイリンガル教育においては、正常な経過でも「一時的な言語障害」が発生することが知ら…

(森 2010) 自閉症とGABA

最近自閉症とオキシトシンとの関連性がクローズアップされている。しかし自閉症は単一疾患ではなく、症状の近い疾患の集合体としての症候群である。オキシトシンのみですべての症例を説明できるとは考えにくい。GABAニューロンも、少なくとも一部の自閉症発…

(Stavrakaki, Chrysomallis & Petraki 2011) バイリンガルSLI発現と各言語の特徴

バイリンガルにおけるSLIの発現には各言語の特徴が影響しているということを、客観的データを持って示した論文。英語・日本語のような、より言語間の距離が離れた組み合わせであれば、SLIの発生はより深刻であろう。 Clin Linguist Phon. 2011 May;25(5):339…

(Stahmer, Akshoomoff & Cunningham 2011) 自閉症とコミュニティプログラム

自閉症からは、一生逃れることができない。自閉症として生まれてきたからには、自閉症という状態と一生共存していかなければならない。今のところ有効な治療法はない。そして、その有病率は上昇しつつあるという有力なエビデンスがある。どうすればいいので…

(菊池 n.d.) わが子をバイリンガルにする方法

わが子をバイリンガルにする方法 タイトルに惹かれて読んでは見たものの、あまり参考になるような内容はありませんでした。 個人的には、英語で話しかけたい、英語の歌を沢山聞かせたい、本を読んであげたい、一緒に英語の DVD が見たいなどあるのだが、一体…

(酒井 2005) (鄭 2007) 第2言語習得と左下前頭回

大脳の左下前頭回が言語表出機能を担っているという知見は、古くから存在していた。これは、第2言語習得度とfMRIでの左下前頭回機能が相関しているという興味深い論文。 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 25 (2005) , No. 2 pp.153-164 言葉の脳内処理…

(Pelsser, et al. 2011) ADHDと制限除去食

この結果から、ADHDの中には食事が原因のものも存在していると言っていいのだろう。当然のことながら、食文化の異なる日本で同じことをやっても、まったく同じ結果は期待できない。しかも、ADHDは「症候群」であり、実態としては様々なメカニズムの病態が混…

(Baskerville & Douglas 2010) 行動障害とドーパミン・オキシトシン相互作用

様々な精神疾患における行動障害と、ドーパミン・オキシトシンの相互作用が関連していることが解明されつつある。研究が進めば、治療や高精度の早期診断に役立つことが期待できる。 CNS Neurosci Ther. 2010 Jun;16(3):e92-123. Dopamine and oxytocin inter…

(Cubala-Kucharska 2010) 自閉症の症状と治療法

感染とか毒素とか、いろいろとかなり怪しい論文。「免疫システムの欠損は、今までに研究された大多数の自閉症患者で生じている。」なんて話、聞いたことないし。こんなもの読むに値しないですね。 Acta Neurobiol Exp (Wars). 2010;70(2):141-6. The review …

(Zwaigenbaum 2010) 自閉症の早期発見

自閉症は早期介入が重要であるが、そのために必要な早期発見の研究も進歩を続けている。 Curr Opin Neurol. 2010 Apr;23(2):97-102. Advances in the early detection of autism. Zwaigenbaum L.Department of Pediatrics, University of Alberta, Glenrose …

(Yamasue, et al. 2009) 自閉症とオキシトシン

最近話題のオキシトシン。現時点では最も有望な治療薬となる可能性を秘めていると言っていいだろう。これは日本人研究者による総説。 Psychiatry Clin Neurosci. 2009 Apr;63(2):129-40. Oxytocin, sexually dimorphic features of the social brain, and au…

(Shin Kim, et al. 2011) 自閉症の有病率

自閉症の有病率は増加しつつあると言われているが、正確な数値はよくわかっていない。これは最近行われた、韓国における大規模調査研究。2.64%ということで、従来言われてきた値よりも高い結果となっている。「他のASD亜型」というのは、アスペルガーを指す…

(Pihko, et al. 2007) バイリンガルSLIの脳機能

現時点では、残念ながらバイリンガルSLIを早期に客観的に診断する方法はない。「一時的セミリンガル」と区別がつかないのだ。バイリンガルSLIには早期介入が有効と言われて入るものの、早期診断ができない以上有効な治療手段がないということになる。しかし…

(太田, 他 2010) 自閉症とolanzapine

olanzapineの商品名はジプレキサ。多動や睡眠障害に対して有効だったという症例報告。 【症候からみる自閉症スペクトラム(臨床経験)】 就学前の自閉性障害児の著しい気分変動、多動、睡眠障害に対してolanzapineが有効であった2症例(原著論文/症例報告/特集)…

学童期の英語学習環境は2年間が限度

日本語力をある程度維持しようと考えた場合、学童期における英語学習環境はせいぜい2年以内に抑えなければならない。根拠としては、以下のような意見が挙げられる。 (角山, 上野 2003) バイリンガルと言語障害 (2)日本語 海外に滞在している日本人家族の子弟…